ひきのけて、空をみあげたれば、ことに晴れて、浅黄色なるに、ひかりことごとしき星のおほきなる、むらなく出でたる、なのめならずおもしろくて、花の紙に、箔をうち散らしたるによう似たり。こよひはじめてみそめたる心ちす。さきざきも星月夜みなれたることなれど、これはをりからにや、ことなる心ちするにつけても、ただ物のみおぼゆ。
月をこそ ながめなれしか 星の世の
ふかきあわれを こよい知りぬる
建礼門院右京大夫 『建礼門院右京大夫集』
建礼門院右京大夫は建礼門院徳子に仕えた女官であり、平清盛の孫、資盛の恋人でもあった人。平家のの没落により、主人である徳子は出家し、大原へ。恋人である資盛は壇ノ浦で海の藻屑に。すべてを失った右京大夫は、兄の元へ身を寄せるのだが、その時に詠まれた和歌。雪降る夜に、布団をはらいのけて、空を見上げると、和紙に箔を散りばめたような星が瞬き、その美しさに気がつく。
昨日の天の川に続き、今日も星の歌。和歌に添えられた詞書の描写が美しい。
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