2015年7月20日月曜日

七月二十日 猫の尻尾から月が顏を出し 月が青白い眼鏡をかけて見てゐる

夜景

高い家根の上で猫が寢てゐる
猫の尻尾から月が顏を出し
月が青白い眼鏡をかけて見てゐる
だが泥棒はそれを知らないから
近所の家根へひよつこりとび出し
なにかまつくろの衣裝をきこんで
煙突の窓から忍びこまうとするところ。

萩原 朔太郎


夜景というと、ニューヨークの摩天楼や函館など、光が煌めく夜景を想起する。戦前の夜の景色はどんなものだったのだろう。今よりずっと暗くて静かで、空が高くみえただろう。くるんとした猫のしっぽに月の丸み。弧月かもしれないし、満月かもしれない。青白い月光に照らされたユーモラスなサイレント映画の一幕のよう。
七月十九日 吉野川岩波高く行く水のはやくぞ人を思ひそめてし

0 件のコメント:

コメントを投稿

Gallery

Most Commented

連絡フォーム

名前

メール *

メッセージ *

2014 © Planer - Responsive Blogger Magazine Theme
Planer theme by Way2themes